吹きガラス解説 [ポンテ]

もう恋なんてしないなんて言わないよ絶対~♪

まだ、テレビで歌番組が全盛だった頃の話です。

「恋をしない」 X 「言わない」

2重否定=強い肯定ということで、またきっと「恋をする」という意味なのですが、

このフレーズを初めて聞いた時、

「ハぁ?こいつ何言ってんの?」というのが率直な感想でした。

当時の私にはこの歌詞が醸し出す奥深さに気付くにはまだ、若く

経験値が届いていなかったのでした。

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さて、「ポンテ」の話でしたね。

ポンテとはイタリア語で「橋」を意味し、吹きガラスでは吹き竿から別の竿に受け渡す作業のことを指します。

回転軸に対して器が前後逆転することで、作業範囲が変わります。

コップであれば、下半分の底面を作った後にポンテを取り、飲み口の加工にスイッチします。

赤く熱を帯びている部分がポンテです。

竿元のくびれた部分から切り離します。

吹きガラス体験教室では、ほとんどの皆さんがここでびっくりすることになります。

そして、教室の生徒さんの多くがこの作業に少なからず、トラウマを感じているのも事実です。

失敗があるとすれば、かなりの確率でこの場面で起きるからであります。

竿を叩いて振動を発生させて、くびれた部分に亀裂が入り、吹き竿から切り離すのですが、

同時にポンテの熱が冷めていると、ポンテも外れてしまって、器本体が床に落ちて割れてしまうことになります。

吹きガラスの世界では一瞬のタイミングの違いすら、失敗に繋がりますので、心臓にとてつもなく重い負荷がかかります。

 

ここで、恋の魔術に戻ります。

やっぱり失恋は、どんな手を使ってでも避けたいもの。

出来ることなら、2度と味わいたくない、嫌なものですよね。

どんなことがあっても、この恋はあきらめない!!

と強く誓ったとしましょう。

ここでダークフォースが発生します。

深層心理は否定形を認識しないからです。

do not ~

は顕在意識下では理解されるのですが、無意識下では意味を成さないのだそうです。

Don’t (never)give up! が>>>>

無意識では Give up に実際は翻訳されていたとすると・・・・・

恐ろしいことです。((((;゚д゚))))アワワワワ

逃げちゃだめだ・・・逃げちゃだめだ・・・

食べちゃだめだ・・・食べちゃだめだ・・・

なんという恐ろしさ。

「まんじゅう怖い」という古典落語があるほどです。

 

それでは、この現象を逆手にとってみたら、どうなるでしょう。

 

クリスマスにはあんたと二人でなんか過ごさないし、

イルミネーションを観ながら、手なんか繋いだりしないんだからね!!

なんという・・・・ツンデレ・・・・
惚れてしまうがな。

 

ポンテが苦手なあなた。

「細けぇ、ことはいいんだよ!」

「ポンテは、成功しない!!」

「真ん中なんかには付けかない!!絶対にだ!!」

叫んでみたら、もしかして上手くゆくかもしれません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

吹きガラス [制作手順 ]

ネットのレビューで「吹きガラスの作業工程を事前に知りたかった」とのコメントをいただきました。

今回はこの場を借りまして、吹きガラスとはどういったものなのかを大まかに解説したいと思います。

まず、吹きガラスに必要な道具として一番大切なのは「吹き竿」です。

「ブロー・パイプ」とも呼ばれています。

1200℃で熔けているガラスを竿に巻き取って、形を整え、息を吹き込み器にしてゆきます。

画像を交えて、説明してゆきましょう。

ガラスが1200℃の高温でドロドロに熔けている状態で素焼きのポットに入っています。

画像中央で光っているのが、ガラス溶解炉の巻口と呼ばれる穴です。

 

これを拭き竿に巻き取ります。

きれいに、適量巻き取るにはそれなりのコツが要ります。

技術解説はまた別の機会に譲ることにして、先に進みましょう。

竿に巻き取ったガラスを作業ベンチに運び、形を整えた後に

息を吹き込みます。これが「下玉」と呼ばれる、第1層目のガラス玉です。

これを冷ました後にもう一度、ガラス玉を炉のポットの中に入れて2層目を重ね巻きします。

コップの場合は大きさは2層で十分ですが、大きな花器やお鉢などの場合は3層目を重ねて大きさを調整します。

上の画像は2層目を濡れた新聞紙を使い、成型している場面です。

最近は再生紙の比率が多くなり、新聞紙の質が落ちているため、当工房ではカーボン製の不織布を併用しています。

体験教室では様々なデザインと装飾をお好みで選んでいただけます。

色の組み合わせや色を載せるタイミング・器のどの部分に何色を載せるかによって多彩なバリエーションが生まれます。

さらに、息の吹き込み方や力の入れ具合、角度によって、風合いが変わってゆきます。

作り手が変われば、なおさらです。まさに一期一会!!

世界に一つだけのオリジナル作品に仕上がります。

色を使った装飾以外にも金型に吹き込むことで表面の凹凸を作り出し、

光の屈折でガラスならではの表現で魅せることも出来ます。

金型に吹き込んだ直後の状態です。

縦に筋が入っています。光が拡散して照明などにすると、とても映えます。

装飾が完成したら、コップの形にしてゆく作業に移ります。

息を吹き込み、大きくしたら竿元付近を絞って細くします。

ここで、登場するのが、「ハシ」または「ジャック」と呼ばれる道具です。

様々な使い道があります。吹きガラス専門の道具ですので、目にしたことがある方は少ないでしょう。

作業途中ではコップの底になる部分は先端にあります。

この部分を平面になるように、圧縮します。

やりすぎると、丈が低くなったり、側面のラインが崩れたりするので、

力の加減と角度の精度が要求されます。

ここまでで、コップの下半分の形が完成です。

この後、くびれた部分に水をほんの少量つけて、本体部分を吹き竿と切り離します。

ポンテと呼ばれる、別な竿で前後を反転させるのですが、テレビではあまり紹介されない作業なので

ほとんどのお客さんはこの場面でビックリします。

先端に空いている小さな穴を焼いて柔らかくして、道具で開いてゆきます。

飲み口の傾斜や開き加減などで、ここでも印象は大きく変わります。

何度か焼き戻しつつ、仕上がりを調整し、満足ゆく形になったら、最後は竿とコップを切り離します。

竿を叩いて、細かい振動を与えるとポロッときれいに剥がれます。不思議です。

コップ底中央の鋭利な部分をハンド・バーナーで焼いて500℃の部屋に移して作業終了です。

翌日の朝までかけて、ゆっくり常温まで冷ましたら、取り出し、完成です。

いかがでしたでしょうか。

本当に大まかな流れだけを紹介したので、不明な点もあるかと思いますが、

次回以降、部分的に解説したり、動画を交えて観てゆくことで、少しづつですが、

吹きガラスの魅力をお伝えしてゆきたいと思います。