ネットのレビューで「吹きガラスの作業工程を事前に知りたかった」とのコメントをいただきました。
今回はこの場を借りまして、吹きガラスとはどういったものなのかを大まかに解説したいと思います。
まず、吹きガラスに必要な道具として一番大切なのは「吹き竿」です。
「ブロー・パイプ」とも呼ばれています。
1200℃で熔けているガラスを竿に巻き取って、形を整え、息を吹き込み器にしてゆきます。
画像を交えて、説明してゆきましょう。
ガラスが1200℃の高温でドロドロに熔けている状態で素焼きのポットに入っています。
画像中央で光っているのが、ガラス溶解炉の巻口と呼ばれる穴です。
これを拭き竿に巻き取ります。
きれいに、適量巻き取るにはそれなりのコツが要ります。
技術解説はまた別の機会に譲ることにして、先に進みましょう。
竿に巻き取ったガラスを作業ベンチに運び、形を整えた後に
息を吹き込みます。これが「下玉」と呼ばれる、第1層目のガラス玉です。
これを冷ました後にもう一度、ガラス玉を炉のポットの中に入れて2層目を重ね巻きします。
コップの場合は大きさは2層で十分ですが、大きな花器やお鉢などの場合は3層目を重ねて大きさを調整します。
上の画像は2層目を濡れた新聞紙を使い、成型している場面です。
最近は再生紙の比率が多くなり、新聞紙の質が落ちているため、当工房ではカーボン製の不織布を併用しています。
体験教室では様々なデザインと装飾をお好みで選んでいただけます。
色の組み合わせや色を載せるタイミング・器のどの部分に何色を載せるかによって多彩なバリエーションが生まれます。
さらに、息の吹き込み方や力の入れ具合、角度によって、風合いが変わってゆきます。
作り手が変われば、なおさらです。まさに一期一会!!
世界に一つだけのオリジナル作品に仕上がります。
色を使った装飾以外にも金型に吹き込むことで表面の凹凸を作り出し、
光の屈折でガラスならではの表現で魅せることも出来ます。
金型に吹き込んだ直後の状態です。
縦に筋が入っています。光が拡散して照明などにすると、とても映えます。
装飾が完成したら、コップの形にしてゆく作業に移ります。
息を吹き込み、大きくしたら竿元付近を絞って細くします。
ここで、登場するのが、「ハシ」または「ジャック」と呼ばれる道具です。
様々な使い道があります。吹きガラス専門の道具ですので、目にしたことがある方は少ないでしょう。
作業途中ではコップの底になる部分は先端にあります。
この部分を平面になるように、圧縮します。
やりすぎると、丈が低くなったり、側面のラインが崩れたりするので、
力の加減と角度の精度が要求されます。
ここまでで、コップの下半分の形が完成です。
この後、くびれた部分に水をほんの少量つけて、本体部分を吹き竿と切り離します。
ポンテと呼ばれる、別な竿で前後を反転させるのですが、テレビではあまり紹介されない作業なので
ほとんどのお客さんはこの場面でビックリします。
先端に空いている小さな穴を焼いて柔らかくして、道具で開いてゆきます。
飲み口の傾斜や開き加減などで、ここでも印象は大きく変わります。
何度か焼き戻しつつ、仕上がりを調整し、満足ゆく形になったら、最後は竿とコップを切り離します。
竿を叩いて、細かい振動を与えるとポロッときれいに剥がれます。不思議です。
コップ底中央の鋭利な部分をハンド・バーナーで焼いて500℃の部屋に移して作業終了です。
翌日の朝までかけて、ゆっくり常温まで冷ましたら、取り出し、完成です。
いかがでしたでしょうか。
本当に大まかな流れだけを紹介したので、不明な点もあるかと思いますが、
次回以降、部分的に解説したり、動画を交えて観てゆくことで、少しづつですが、
吹きガラスの魅力をお伝えしてゆきたいと思います。